売れるお店の心理学

売れるお店の心理学(7)

目先の利益を捨てなさい

日本経済が低迷する中「目先の利益を捨てなさい」と題し、広岡会長の経営哲学思想を中心とした語録を分かりやすく編集し、東洋経済新報社から出版されました。
各企業は少しの利益でも確保したい時にこの本が出版されたのです。
この本を読んで感じた事は、常に危機感を抱きながら今何を優先し行動しなければ成らないかを、具体的に教えています。
強い者も弱い者も危機感を持たないと突然の変化、環境に対応できず、もろくも滅び去ってしまいます。

危機感とは進化の原点であり一種のエネルギーを創造します。そのエネルギーとは潜在意識に隠された自分でも想像できない能力なのです。
魚に「イワシ」が居ますが、魚の種類の中では一番弱い魚と言われ字も「鰯」と名づけられています。
この鰯を生きたままイケス料理店に運ぶ途中でほとんどの鰯は死んでしまいます。海水の温度や酸素量等、物理的環境は完璧に整え生存できる要素に欠点は無い状態にしても、4時間の輸送途中に死んでしまいます。
何故死んでしまうのか?それは揺れる環境に耐え切れず次々と死んでしまうのですが、さて、この鰯を生きたまま5時間以上の輸送に耐えられるようにするのにはどのよう方法で運べば良いのか?。
この鰯達に危機感を与え潜在エネルギーを発揮させるのです。その方法とはこのイケスの中にハマチを数匹入れるのです。
すなわち鰯は何時食べられてしまうかと思う危機感を感じ、その危機感(恐怖)から生まれる潜在意識的エネルギーを発揮させ、通常では耐えられない環境下でも生存しようとする本能的意欲が湧き上がってくるのです。
何匹かの鰯は食べられてしまいますが、ほとんどの鰯は活気に満ち元気に泳ぎ5時間でも6時間でも生きていられるのです。

さて、我々ビジネス界でも同じ事が言えます。市場環境の変化は過去の知識や経験を大切にするあまり、冒険も出来ず不況の波に飲み込まれ、悩みの世界でうろたえ衰弱し淘汰されてしまいます。言わば死を待つ「鰯」同様です。

「目先の利益を捨てなさい」には、危機感から生まれ捨て身の開き直り、つまり過去を捨て未来に大きな夢と希望を打ち立て、今までの経験や知識を破壊しながら修正し行動する思想的観念を分かりやすく解説しています。
意識の破壊と修正は一分一秒、常に繰り返され、今と言う時を創造し今の要求に対処し、未来の新体制を作り出します。
従ってこの「本」には非常に大きなエネルギーが隠され、ビジネスの根本が書かれていると言っても過言では有りません。
次に、欲望の有り方です。ここで書かれている言葉の裏側には壮大な欲望があります。その欲望とは利己的欲ではなく、業界、社会的貢献を担う使命感を打ち立てる欲です。
広岡会長が抱く精神世界は「自己の福を求めず」であり、その壮大な欲望とは聖欲とか潔欲と解釈され、神仏が望む欲望です。
それを端的に述べているのが「お客様に対する感謝」から始まる一連の語録です。その中にあるのが「目先の利益を捨てなさい」なのです。

社員の意識が目先の利益、欲の追求が無いとしたら如何でしょう。それでは商売に成らない!。それは逆です。
欲を持たない社員の動きはお客様の為にと、商品に対して、又、アドバイスとして詳細な説明を自由に行なえます。この行為は売込みではなく商品知識の伝達と、カーライフに関する教育行為に徹する形になり、正々堂々とお客様に接する事ができ、その結果お客様からも信頼される事になるのです。
逆に、目先の利益、欲の追求は、人間の行動(社員)に一種の制限された精神状態「欲から来る意念」を生み出し「陰」の波動を発します。その為にお客様は警戒心を高め安心感が損なわれ気分を害してしまいます。
この様な体験は皆さん何度も経験しているにもかかわらず、自分の事になると「目先の利益」を追いかけ大切な事を忘れてしまうのです。

この本は今後のビジネス界をリードする為の精神世界が隠されています。
見える物、見えない物、言葉の裏に隠された経営哲学を素直な心で紐解きながら熟読すれば、ビジネスを超えた人生学の真髄が見えてくるはずです。
「目先の利益を捨てなさい」が発刊された事により、多くの人々に勇気を与え未来に挑戦する希望を見出す事と思います。
まずは最初に文字を読み、二回目は文字の裏側に隠された意味を感じ、三回目には常に変化する時代の経営哲学を学び、四回目は道徳的人生哲学を素直に学び取って頂きたい。
何故なら、オートウエーブの急成長は「目先の利益を捨てなさい」から始まり「お客様に対する感謝の念」から生まれた物だからである。
ぜひ広岡会長の真髄を理解し21世紀の業績につなげて頂きたい。