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売れるお店の心理学(1)

昨今の不況を嘆く前に多方面(経済、政治、文化、人間、家族等)に渡り研究し、また分析し自分のお店を第三者的な目で観察する必要がある。
どのような時代であっても人間生活において不動の物と流動的な物とに分かれるが、それを決定付けるのは全て人間の意識行動から始まる。
人間が文化を生み政治を起こし経済社会の組織化をなしている訳であって、良くても悪くても全責任は人間そのものであるが、全ての責任を政治や経済に転化し自己の責任を逃れようとしている。
売上減、リストラ、倒産、離散等の責任が外部要因としても、外部で保証はしてはくれない。従って全てが自己責任であり、今までマンネリ化していた商習慣を取り払い、今を生きる知恵を習得しなければならない。

売れるお店の心理学と題し述べる前に、全ての責任は自分にあると言う事を自覚して頂きたい。何故かと言うと、他との要因は、他が作り上げた事で常識化されており、参考にしたとしても自分で研究し、納得の結果として活用し何事も鵜呑みにしてはならない。ここに述べる事も同様の扱いにしてほしい。
と言うのは各自の性格、気質、感性、等が異なっている為に、判で押したような結果は得られないからである。
今までに多くの成功者が居るが、その人の伝記を熟読し同じ事をすれば成功すると言うのであれば皆が金持ちになれる。問題は人格、思想、哲学にプラスし、性格、気質、感性と幅広く奥行きが深い、従って成功の保証は無い。

さて、売れるお店と言うより物販店で皆さんが入りやすいお店やまた行きたくなる代表的な項目を列記して見よう。
明るく清潔感があり色彩豊かなお店。
気楽に店内を動き回れるお店。
店員がしつこく付きまとわないお店。
強引な売り込みが無いお店。
キビキビした活気に満ちたお店。
聞きたい時に付近に店員が居るお店。
商品知識が豊富で色々教えてくれるお店。
店員と友達のように話せるお店。
商品が多彩で好奇心をそそるお店。
応対が親切で礼儀正しいお店。
以上代表的な10項目を列記したが、価格の面に付いては除いてある。あくまでも同一価格の条件で考えないと焦点がボケてしまうからです。
10項目の中で7項目が人為的要素であり、残りの3項目は環境的要素となる。
7項目のうち1項目を反対の要素にすると、全てが損なわれ売れるお店ではなくなる。これらの要素が調和して初めてお客様が得られるものと考えなくてはならない。この調和はイコール気分が良いお店となる。

では以上の10項目を達成すれば完全なのか?。
答えは不完全である。上記の10項目は形だけの現象的要素であり、心理的要素を含んでいないロボット的ステージである。
では何が不足か?それはお客様に対する「感謝の意念」である。この答えを教えてくれたオートウェーブの広岡会長は、「お客様に対し常に感謝の念で接することで各現象的な要素が光るのです。」と教えられました。
形だけのお店を作るのは難しくは有りません。問題はお客様に対する社員の思想と対応です。
社員が何を考え何を目標として仕事をするかによって、お客様の反応に変化を及ぼします。常に感謝の意識で接すれば、挨拶にしても、応対の時でも、態度、表現、言葉使いはおのずと変化し、他店には無い好印象を与えることが出来ます。
好印象とはお客様が勝手に感じることであり、それを望む意識で行なっているのでは有りません。もし、それを望む意識で接していたとしたら欲望の意識であり、その意識はお客様に見抜かれてしまいます。それでは何の意味もありません。
広岡会長の「感謝」とは、「我々はお客様に生かされているのだ」と言う本質的な意識であり、無欲、無償の感謝のことです。
「欲が有るから商売しているのだ!」と言う声が聞こえて来るようですが、心理学的に分析すると無欲で接することは、自己の意識を開放してお客様の為にと積極的に行動できる「潜在的エネルギー」を無意識に発揮するのです。

この潜在的エネルギーは「波動」としてお客様に発信し、満足度を更に増幅させる事になります。
これからのビジネスはお客様とは同等の位置にいながら、要求に応じる体制が信頼を得る事になります。それには節度をわきまえ堂々たる態度で接し、本質的な満足度を与える応対として「無欲」と言う意念で接すると言う事です。
欲による傷害は、見栄、体裁、恥、度胸等を意識し自己防衛的動作になりがちである。その意識を排除する事により積極的行動に移れるのです。
[この件について多くの矛盾を含み整然とした解説を必要とするが、長く成り過ぎるので、この件に付いては次回に回したい。]
「無欲の意念」その回答が「商的効果」を生み出し強力なパワーとして現れてきます。

商品知識の重要性

商品知識が乏しい場合、お客様の為にと話す事は出来ない。お客様が必要と思って来店している訳で、その商品の詳細は店員の説明を参考に判断する。
商品の知識が無い社員には高額商品の販売は困難である。それは商品の価値はお客様が勝手に判断し安価な商品を掴んでしまうからです。
また、お客様とのコミニュケーションを積極的に進められない為に、社員の意識中に戸惑いや不安が生まれてくる。この不安感から発する波動は態度や言葉使いに表れ、陰のエネルギーを発し、お客様の感性に捕らえられてしまう。
従って商品知識を持っている社員と持たない社員では外見的に判断できないが、心理的変化を内在させてしまう為に、商品知識を得る努力が必要なのである。

説得と納得

説得とは売り手からの一方的表現であり、だまされるのではと言う警戒心を抱かせ非常に不安定なビジネスとなるが、納得とはお客様の了解的意識の現れであり決定的ビジネスと成る。
説得の裏側にある「欲」は必ずお客様に通じると先に述べたが、説(商品説明)に徹底し、結論を求めないことがお客様の納得心を引き出すことができる。
高額商品であれば有るほど詳細な部分(性能・能力・技術の違い等)を説明し判断を仰ぐ行動を取る。
詳細な説明はお客様の心理にお店や社員に対しての信頼感が芽生え、安心感を与えることが出来、継続的顧客にできる最も重要な事柄である。

得意分野の分担

スーパーマンで無い限りあらゆる分野の知識を得ることは困難である。
そこで、専門分野(得意な分野)を各社員が選択又は申告し、各分野を総合的にカバーできるように体制を構築する。一般的企業は人事課で社員を配置しているが、これからの時代は得意分野を人事課に申告し、人事課はその申告を基に適材適所に配置する体制が望まれる。
得意な仕事は心理的に楽しく張り合いがあり、一見苦しい作業でも不満は発生しないものである。逆に不得意な部門に回されると活気が薄れ能率が極端に低下する。人の心理とは非常に面白く出来ていて、その例が趣味の世界であり、こんな物!と言われながら没頭している。他人には理解できない各自の精神世界があり、その人の感性・特徴・個性として現れる。
仕事についても同様であり、休まず時間を忘れて没頭する。そのエネルギーは(好きだから!)の世界であり理屈は無い。
これらのことから解るように、得意分野に配備された社員の心理的安定は作業効率を高め正確さを高め、強力な戦力と化すのである。

いろいろ述べてきたが一番大事なのは人間関係の意思疎通であって商品ではない、いかにお客様と心が通じ合えるかが「売れるお店」の原点である。

どの商売でも売り手と買い手の心理は全て共通し、お互いの心理が同調するところにビジネスが生まれる。お客様の心理に早く近づけたければ、微笑から入るのが一番早い。形だけの微笑みは先に述べたように波動として伝達され意味の無い物になってしまうか、又は逆効果になってしまう。
ビジネスに限らず「努力・挑戦」とは自己に内在する「善」の知恵と行動で表す段階的現象であり、その望む結果が得られた時に留まらず、更に深く人間の心理を探求する努力が更に大きな結果として拡大してゆく。
 
「売れるお店の心理学」と題したが、年齢、性格、気質、状況、環境、時間、男女、等々組み合わせによって複雑化し回答と結果は同じではない。
言える事はお客様に対し常に「善と感謝の意念」で接することに尽きる。

次回は、精神とは何か?心とは何か?その根源は何処から来ているのか?を探求し、その中からビジネスや人間関係に影響する諸問題を述べてみる。
しかし、心(魂)の世界である為に精神科医でも理解できない分野に立ち入らなくては成らない。従って次回の原稿は宗教、哲学、想念、心霊的分野を含み人によっては嫌悪感、反発や抵抗を抱く可能性もあり、次回は希望者にのみに提供したい。